2008年11月21日

(10)レナード氏のコーチング

ここまでの流れを一度整理しましょう。

1.スポーツのコーチが今のコーチングの源流のように語られているが、それは意図的なハロー効果の期待であり、現在の混乱の元凶となっている。

2.コーチングの創始者については、いくつかの記述は散見できるが、いずれも単発もしくは同じ文節に過ぎず、追認を確認できる文献には行き当たらず、現時点では「ビジネスにコーチ」と最初に言ったのは誰だかわからない。
(例えば「ルー・タイス氏が初めてスポーツ界以外にコーチングを持ち込んだ」との記述も見られるが、現時点ではこれもまた追認する文献を見出していない)

3.どうして同じ年に2つのコーチ養成機関が誕生したのか、誰も説明していない。

4.先駆者らしいトマス・レナード氏の存在は、どうしてこうも軽んじられるのか?

5.日本と米国では、状況や手法、認識などが異なっている可能性がある。
(日本での独自進化の可能性)

では、どうして日本ではレナード氏離れが起こっているのか?
今回はこの点を検証します。

では氏の著作を実際に読んでみましょう。

「いつも『いいこと』が起こる人の習慣(自分を画期的に改善する21の法則)(2001 三笠書房)」

これがレナード氏の「代表的な」著作です。
タイトル見て・・・何かを感じませんか?
ポジティブシンキング・成功法則の臭いがぷんぷんします。
ただし原題は「The Portable Coach」
ずいぶんシンプルです。
現在では版権が移動して、原題通り「ポータブル・コーチ」として発売されています。
(コーチ21系の出版社です)

しかしこの書籍、目次を開いただけで明白なのですが、(いわゆる)コーチングの本ではなく「成功法則」本です。
「はじめに」にはこう書かれています。

「私は、底の浅い積極志向は嫌いである」
「そんなあなたに、本物の「積極思想」を一つプレゼントしよう」
「本書で紹介する二十一の「魅力の法則」
「なかには、たった三ヶ月で、生活保護受給者から一転して年間六万ドルの事業収入を得るまでになった人もいる」

・・・いかがですか?
中身の充実度はさておいて、どこをどうとっても「成功法則」

そして氏は、
「金、仕事、人間の内面といったあらゆる分野を統合して」「長期的な成功の手助けをする」ために今の仕事を始めたと記します。
更に、
「私の知る限り、私より前にこの仕事を始めた人はいない」
と。

それはたぶん事実です。
何回か前で書きましたが「成功法則」を教える機関はすでに存在していましたが(ナポレオン・ヒル財団等)、成功法則に則って具体的にマンツーマンで伴走しようなんて考える人はいなかった。
だからレナード氏の発明は画期的なわけです。

しかし・・・これって、ちょっと違うと感じませんか?
いや、はっきり言えば、今わたし達が知っているコーチングと、かなり異なっています。
それとも、わたしの認識が間違っているのでしょうか?

古書店にいけば100円で投げ売りされているたぐいの本ですから、興味があったら探してみて下さい。
ちなみにわたしはアマゾンで1円で買いました。

とにかくレナード氏は、1998年に米国でこんな本を出版していたのです。
コーチ・ユニバーシティを開設して6年後に。
こういう方が作ったコーチ養成機関とは、いったい如何なるカリキュラムだったのでしょう・・・

すでに述べましたが、如何に成功法則と切り離すかが「コーチング」には重要だったと。
確かに名前は変えた。
パラダイムシフトもできた。
しかし・・・中身は成功法則そのままだったたしたら・・・
つまりレナード氏は「コンサルティングをコーチング」に置き換えただけだったのではないか?
と考えられるのです。

わたしたちはこの事実を、衝撃を以て受け止める必要があります。
何故なら、どう読み替えようとも「ありふれた」成功法則本としか読めないコーチ・ユニバーシティ創設者の代表的著作がポータブル「コーチ」と題されているからです。

なぜ、コーチ21の伊藤氏が、コーチングに初めて接したとき「目新しいとは思わなかった」と印象を語られたかが、これではっきりしたと思いませんか?
伊藤氏が魅力を感じたのは、やはり「コーチ・コーチング」という名前だけだったと、あらためて推察できるのです。

ところで現在、米国のサイトでCoach Universityを検索すると、何故か「Coach U」がヒットします。
名称変更でしょうか?
それも「わからない」
どこにも説明はないのですから。
そしてこのCoach Uのサイトの中に、レナード氏は「Father of Coaching」と呼ばれているとの記述があります。
「コーチングの父」ということでしょうか。
コーチ・ユニバーシティでは、レナード氏にそれなりの敬意を表しているようです。
しかし日本ではほとんど関心が示されない。

それは何故か?

つまり日本の関係者こそが、レナード氏とコーチ・ユニバーシティにつきまとう「成功法則」の影から決別したいと考えたのではないのか?
と推察できるのです。

そしてこの推察が、「コーチングは日本で独自に発展した」という仮説を裏付ける根拠にもなるのです。
posted by Shigeo at 17:47| 【3】コーチングを発明した人々 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。