2008年10月24日

(7)発明家のジレンマ

(7)発明家のジレンマ

では、この画期的なパラダイムシフトを「誰が」発明したのか?
当然、コーチング界では偉大なる存在として多くのエピソードやそのサクセスストーリーに関する記述であふれている・・・はず。
ところが、コーチング界で、この発明家に関して語られることはほとんどありません。
信じられない方は書店に行って、片っ端から「コーチング」に関する書籍を当たってみて下さい。
少なくとも「現代の『コーチング』につながる理論や仕組みを開発した人物」には、滅多なことでは行き当たらないと思います。

これは、とても不思議なことではないでしょうか?
仮に、多くの書籍が述べていることが事実で、「自然な流れ」でビジネスにコーチングが導入されたのだとしても、それにしても切っ掛けになった出来事やら著述があったと考えるのが自然。
更に疑うならば、Coach Universityの設立の切っ掛けは何だったのか?
何故、それらが明かでないのか?
それが論理的なものではなく、物語的で叙情的な事柄であったとしても、創業や発明に関する物語は、それなりに高揚感や感動的な逸話で彩られています。
それなのに「何故」創立時の物語が空白なのか?

さて、結論としてはCoach Universityの創設者は、トマス・レナード氏という方です。
後になってみれば違ったアプローチもあったのですが、わたしはこの人物にたどり着くのにとても苦労しました。

「難病患者を支えるコーチングサポートの実際(2002真興交易医書出版局)」

この書籍の中の「コーチングの歴史」に、以下のような記述があります。

米国では1980年代後半に「ビジネスの世界でコーチという存在が誕生した」
「著名なコーチとして知られるのはThomas Leonardである」
彼の独自の「スキルを体系化したものがコーチング」である。
「彼はその経験やノウハウを基に」「コーチ・ユニバーシティを設立した」

とても明解な記述です。
これでもう「ビジネスにコーチングを持ち込んだ創始者はトマス・レナード氏」で決まり・・・と結論付けたいところなのですが、どうも釈然としないのです。
何故か。
Coach Universityと日本での独占契約結んでいるコーチ21や、コーチ21の関係者が理事をされている日本コーチ協会のサイトには、どうしたことかレナード氏に関しての記述がないのです(以前紹介した古いブログは除く)。
まるで自然発生的にCoach Universityが創立されたかのようです。

では、コーチ21はレナード氏を創設者と考えていないのか?
とも考えられない。
というのも「難病患者を支えるコーチングサポートの実際」で「コーチングの歴史」などの執筆を担当されている方々は、コーチ21の方々です。

どうしても釈然としません。

とにかく日本で独占契約を結んでいるコーチ21からしてこんな矛盾を抱えています。
いずれにしろもう少し検証する必要が感じられます。

※上掲の書籍をきっかけにしてようやくコーチ・ユニバーシティの創設者が判明し、わたしはさっそくレナード氏の著作を調べました。
この結果にまた驚かされるのですが、それは改めて後述します。
ただ、今の時点で明らかにしておくべきことは、レナード氏も自身の著作の中で「1982年にパーソナル・コーチの仕事を始めた」「フィラデルフィアの新聞が最近(1998年前後)、『パーソナルコーチングの創始者はレナード氏だ』と書いた」とはっきりと述べてはいます。
が、残念ながら追随して事実を証明してくれる文献は存在しません。

世間には後になってから「実は以前から注目していたんだ」とか「絶対、ダメになると思っていた」などと発言するタイプがいますが、言うならばレナード氏のこれらの発言も同類と言わざるを得ず、いわゆる「後出しジャンケン」に過ぎません。
「有名」になった後で「実は1982年からやっていた」では、証拠としての説得力に欠けます。
(そういう内容の仕事をしていたことを否定したいわけではありません。あくまでネーミングの話)。

それと以前も書きましたが、同じ年に別のグループがCTIを設立している事実も見逃せません。

いくらビジネス展開が早い米国とは言え、Coach Universityが創設されたのを知ってただちに真似してCTIを創ったとは、あまりに考えづらい。
いうのも、コミュニケーションスキルの習得がテーマです。
思いついて直ぐに始められる性質のものではありません。
くわえて1992年以前にレナード氏は著作を発表していないようなので、CTIは創設メンバーはいったいどこでレナード氏の画期的なパラダイムシフトを学んだのか?

それと米国は訴訟社会です。
仮にCTIがCoach Universityのカリキュラムを模倣したのであれば、ただちに訴訟を起こされるのではないか?

このように、Coach Universityの創設者はThomas Leonard氏であるという指摘もあるが、その事実を裏付ける文献はあまりに乏しい、というのが現実です。

「発明者」という称号は大袈裟だったかもしれません。
が、創始者、提唱者、中心的人物・・・・それらの肩書きを有する人物すら見あたらない世界。
それが「コーチング」という業界なのです。
posted by Shigeo at 10:11| 【3】コーチングを発明した人々 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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